元気企業
2014年06月
日本協同企画株式会社
農家の視点から効率よく使いやすい選果機を開発、農家の競争力強化に貢献
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代表取締役社長 宮田 和男 創業 昭和60年9月 事業所 茨城県筑西市門井1705 事業内容 果実、野菜類の選果機械及び選果施設の企画、設計、開発、施工、管理及び修理、工業所有権(特許・実用新案など)の保有利用 URL http://nkk-gr.com/
日本協同企画株式会社は、筑西市で果実・野菜選別機イタマーズシリーズ及び選果場の企画開発等を手がけ、また工業所有権(特許・実用新案など)の保有利用を行っています。
平成26年4月25日、本社と選果場を訪問し、宮田和男代表取締役社長に話を伺いました。
創業の経緯と「イタマーズ」開発
トマトの選果場

シンプルな構造でニーズに合わせた設置ができる
従来の大手メーカー製の選果機は、農家にとっては大変不満の残るものでした。農産物の仕分け時に傷みが生じて市場価値が下がってしまうことや、大型で複雑な構造のため、維持コストがかかったり人員配置が効率的にできなかったりしたことが原因です。しかし機械の知識を持たない農家は、不便があっても使い続けるしかありませんでした。
そこで昭和60年9月にご自身も農業者であった宮田社長は当社を設立、「農家の視点で本当に役に立つ選果機」の開発に着手しました。当初は大手機械メーカーに設計を依頼しましたが全て失敗に終わり、農家とメーカーでは発想の原点が全く違うことに気付きました。一から自力で作ることを決意した宮田社長は、機械・設計の知識を独学で学び、資金不足という困難の中でも研究を重ねました。
4年後の平成元年に苦心の末に完成させたトマト選果機用引き出しベルトを皮切りに、農作物を傷めない選果機「イタマーズ」シリーズを次々と開発。現在ではトマト等の丸玉用、キュウリ等の長物用、ピーマン・栗・イチゴ等の小玉用に対応したもの、更には一台で丸玉・長物に対応した新型の万能イタマーズを実用化しています。
農家が必要とする選果ラインを
生産物に衝撃を与えず傷めない、シンプル構造で稼動・維持コストが低い、そして効率よく大量処理ができる、という利点を兼ね備えたイタマーズ選果機において、特に宮田社長が追求されたのが「傷めない」という点です。
手作業で搬送ライン上のバケット(受け皿)に乗せられた農産物は、センサー測定を経て分類されます。この分類の際に、農産物に衝撃を与えずに仕分けができるのが従来の選果機との違いです。例えばキュウリを規格別に仕分けるときは、バケットに掘られた2本の溝の下から別のベルトですくい上げるという方法をとり、落とすことがありません。トマトなど丸いものを直角方向に移動させるときは、押出し用のベルトを真横ではなく斜め後方に動かして慣性を相殺し、転がりを防ぎます。これらの方法は特許としても認められました。
イタマーズの選別は全自動ではなく、箱詰め等の傷がつきやすい作業は人の手を入れています。機械と手作業をうまく組み合わせることにより、一つとして同じもののない農産物に柔軟に対応できるようになっています。
傷みの出やすい
供給作業は人の手でセンサーによって
規格ごとに分類箱詰めも手作業で行う
キュウリの選別機
また、品質・等級選別のためのセンサーについても宮田社長は、
「農家が選別を行うときは、経験に基づいた農家ならではの『論理』があります。その『論理』に基づいたセンサーは、他社には真似できないものです。」
とおっしゃいます。社長ご自身に農業経験があるからこそ分かる「論理」が組み込まれることで、トマトならば99通りという細やかな規格分類が可能となっています。
「知的所有権企業」というあり方

ぶつかり合うことなく排果されるトマト
自らを「知的所有権企業」と称する当社は、宮田社長のアイデアを元に企画開発を行い、多数の特許を取得する一方、機械の生産設備そのものは持っていません。画一的に作ったものを一方的に売るのではなく、導入先の生産物や規模などによって異なる要求を満たすことのできる機械を、その都度提供できるようにという理由からです。
「自分たちのような零細企業が大企業に勝つためにはダントツのものを作る必要があります。誰にもできないことができたら、シェアの独占が可能です。」
と宮田社長はおっしゃっています。
大手メーカーですら多額の研究費を費やしたにもかかわらず開発を諦める中で、「どうしてそこまで大きいリスクを負うのか」と内部から猛反対を受けることも多々あったそうです。それでも農家の抱える課題解決のために必死にアイデアを捻出し続けたことで、農家のニーズに合った、どのメーカーにも真似できない製品が出来上がりました。自社からの営業はほとんど行っていないとのことですが、話題が話題を呼び、今やイタマーズ選果機は全国22府県のJA等で活躍しています。
宮田社長のアイデアの力は、社長ご自身の原点である農業にも生かされています。
共に当社の関連会社である農事組合法人協和園芸開発センターと農事組合法人新桜川グリーンファームは、現在8haという広大な農場を持っており、ここで10年以上もの長い歳月をかけ、従来小型のものしか出来なかったフルーツトマトの大玉化・高糖度化の研究に成功しました。当社の「イタマーズ」で高い品質を保証することで、より高付加価値の農産物の生産、固定価格での安定した取引が可能になっています。
おわりに
30代から農協の役員を務めていらっしゃった宮田社長は、「問題があるのに解決のために努力しないのは背任である」という考えをお持ちです。
農業の経営は天候などに左右され、業績の見通しの立ちにくい事業でもあります。そのような現状を良く知る宮田社長だからこそ「農家を救いたい」という情熱を永年に渡り持ち続け、数々の技術革新を可能とし、農家の厚い信頼を得て来られたのだと思います。
宮田社長には、企業の社会的使命や技術革新の原動力について教えていただき、ありがとうございました。
今後のますますの発展をお祈り申し上げます。
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